SBI新生銀行は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言への賛同を表明しています。

SBI新生銀行グループの気候変動への取り組みについて、TCFDのフレームワークに沿ってご説明します。

ガバナンス

持続可能な社会の実現のためには、気候変動への対応は不可欠であると認識しており、サステナビリティ重点課題のひとつとして「気候変動などの環境課題への対応」を掲げています。気候変動への対応に資する事業への投融資など、さまざまな取り組みを通じて社会的な価値創出と、当行グループの中長期的な企業価値向上に努めています。

 

> サステナビリティ経営推進体制

> ポリシー・方針

戦略

機会

気候変動の解決に貢献するビジネスの取組実績

当行グループ全体では、2030年度までにサステナブルファイナンス組成累計額5兆円の達成を目標として掲げています。サステナブルファイナンス組成額のうち、気候変動対応に資するファイナンス組成額の2023年度実績は計5,687億円(当行のサステナブルファイナンス集計対象拡大に伴い、グループ会社実績等も含む)となりました。


法人ビジネスにおいては、各ビジネス関連部署が当行サステナブルインパクト推進部と連携しながら、サステナブルファイナンスを組成・実行しています。その際、サステナブルインパクト推進部の内室であるサステナブルインパクト評価室は、グリーンローン原則やサステナビリティ・リンク・ローン原則など国内外の関連原則と整合した「新生グリーンファイナンス・フレームワーク」や「新生サステナビリティ・リンク・ローン・フレームワーク」に基づき、対象となるファイナンスについてフレームワークへの適合性などを評価しています。

気候変動の解決に資するファイナンスの事例

近年、再生可能エネルギー案件は、小規模な発電施設を複数まとめたポートフォリオ形態が増加傾向にあります。株式会社クリーンエナジーコネクトがスポンサーをつとめる合同会社向けの融資案件では、同社が主体となって実施する約700カ所の低圧太陽光発電設備(合計約69MW)の開発、建設および運営にかかる費用を資金使途として新生グリーンローンを実行しました。国内における大規模太陽光発電設備向けの適地が減少する中、耕作放棄地など遊休地を活用した低圧太陽光発電設備は今後も開発余地があると考えられています。さらに大規模太陽光発電設備建設による土砂災害等の発生も問題視される中、開発期間が短く開発規模も小さい本件は相対的に環境負荷も小さいと評価できます。

本件は当行として初のオフサイトコーポレートPPA(Power Purchase Agreement)案件となりました。この方式は電力の需要地であるオンサイトに発電設備を導入する場合と比べ大規模に再生可能エネルギーを調達できます。また、事業キャッシュフローを中長期的に固定することができることから、気候変動対策とビジネスの両面からメリットがあるものと考えています。当行がこれまで培ってきた高度なストラクチャリング能力を活用し、今後も再生可能エネルギーの更なる導入をファイナンス面から支援していきます。
 

グリーンビルディング案件としては、当行グループの昭和リースが企画・出資するファンドがあげられます。当該ファンドは築古ビルを購入し、省エネ化工事を施して一定ランク以上の環境認証を取得後売却するものです。省エネ性能の高いビルに建て替えるのではなく、既存の構造物を維持したまま省エネ性能を高める改修を行うことで、環境面でのインパクトを創出する新しいタイプのグリーンファイナンス案件となります。なお、評価対象のビル3棟は省エネ工事の結果、いずれも当初の予定通り環境認証を取得しました。

 

個人ビジネスにおいては、お客さまが気候変動や社会課題の解決に貢献できる金融商品として「サステナビリティ預金」(円定期預金)を金額・期間限定で取り扱いました。このうち気候変動対応に関する部分としては、風力発電や太陽光発電プロジェクトに当行が資金を振り向けることで、排出削減につながる資金循環の仕組みを構築し、お客さまと共に、より良い未来の実現を目指すものです。
また、当行はグリーンファイナンスの組成能力を有する金融機関として、環境省のグリーンファイナンスサポーターズ制度に新たに登録しました。日本銀行による「気候変動対応を支援するための資金供給オペレーション」(日銀グリーンオペ)の対象先として、気候変動対応に資する投融資を実施しています。

脱炭素化に向けた段階的な移行(トランジション)の 取組状況

当行は、GHG排出量の多いセクターの脱炭素化を支援していくことが気候変動の取り組みにおいて不可欠かつ金融機関にとっての社会的責任であると認識し、脱炭素化に向けた段階的な移行であるトランジションの取り組みを積極的に支援しています。また、企業におけるトランジションの取り組みは、その時点で最適な状況判断のもとでカーボンニュートラルという野心的な目標に向かうものであり、動的にとらえることが求められます。このことから当行では、お客さまとの対話(エンゲージメント)を行い、トランジションが計画に則って実行されていることを定期的に確認することは、お客さまの脱炭素実現のための重要な活動と考えています。


2023年度には、営業部署、審査部署、サステナビリティ部署等の担当者が参加する部署間横断の形で、「トランジションタスクフォース」が組成されました。本タスクフォースでは、GHG多排出セクター企業のトランジション推進支援や支援に向けた対話の実施に関する行内運用ルール策定およびその運営を行っています。具体的な活動内容としては、ルールブックやエンゲージメントシートの策定、多排出企業の担当者向けの勉強会開催があげられます。

 

トランジションタスクフォースルールブックは、トランジションセクター先の支援方法や、トランジションファイナンスの組成前から組成後にかけての必要な手続き、エンゲージメント方針などを明確化することで、当行内のトランジションファイナンスに関する共通認識を醸成するために策定されました。エンゲージメントシートは、多排出セクター企業と対話を行うにあたり、把握するべき非財務情報の標準化とスコア化をするためのツールです。これを用いてお客さまのビジネスおよびトランジション戦略の深度ある理解や進捗の確認と新たなビジネス機会の発掘を行うために作成されたものです。これらの運用に関する実務面での認識共有を図るべく、2024年5月に多排出企業の担当者向けの勉強会を開催しました。

当行におけるお客さまのトランジション推進の取組事例

2024年3月に当行がアレンジャーとなり、株式会社商船三井グループとのシンジケーション方式によるトランジション・リンク・ローンの契約締結を行いました。また、4月には同社向けに成果連動型利子補給制度を活用したシンジケーション方式のトランジション・リンク・ローンを組成しました。これは経済産業省のカーボンニュートラル実現に向けたトランジション推進のための金融支援制度を活用して組成されたもので、海運業界では初の取り組みとなりました。いずれにおいても、商船三井が策定した「サステナブルファイナンス・フレームワーク」および国際的な指針である「クライメート・トランジション・ファイナンス・ハンドブック」などの関連原則との適合性の確認を、商船三井のトランジション戦略などの確認や、同社へのインタビュー等を通じてサステナブルインパクト評価室が行いました。

 

2023年度には、2023年4月に株式会社JERA向けに組成した当行初のトランジションファイナンスに関して、インタビュー形式で期中のエンゲージメントを実施しました。インタビューでは、金融庁・経済産業省・環境省が策定した「トランジション・ファイナンスにかかるフォローアップガイダンス」を参照しつつ、過年度のトランジション戦略に係る取り組み概要と進捗状況および今後の目標とトランジション戦略の変更の可能性の有無の確認を行いました。具体的には碧南火力発電所におけるアンモニア20%転換の実証実験や、ゼロエミッション火力を達成する場合に必要な燃料としてのアンモニアの調達に向けた取り組み、グローバルな再エネの開発と導入の拡大に向けた英国拠点子会社への再エネのアセットの集約化などについて対話を行いました。

リスク

気候変動リスク

気候変動リスクは主に物理的リスクと移行リスクに分類されます。

 

物理的リスク:

気候変動による災害等により顕在化するリスク。洪水、暴風雨などの気象事象によってもたらされる財物損壊などの直接的インパクト、グローバルサプライチェーンの中断や資源枯渇などの間接的インパクト等が想定されます。

移行リスク:

脱炭素社会へ移行する過程で発生する企業等の事業上および財務上のリスク。GHG排出量が大きい事業や資産の再評価によりもたらされるリスク等が想定されます。

セクター別の気候変動リスクの整理

気候変動の影響を受けると思われるセクターについて、その気候変動リスクを定性的に評価しました。当行グループでは、定性評価の結果およびエクスポージャーの大きさに基づき、セクターおよびアセットタイプごとに優先順位を付けたうえで、定量的な分析などによるリスクの深掘りを実施しています。

シナリオ分析

気候変動への対応を経営上の重要課題のひとつと位置づけ、日頃よりモニタリングしている景気変動と2次元でシナリオの世界観、機会とリスクを整理しました。また、世の中が2℃以下のシナリオに向かっていることを受けて、当行グループの対応状況をまとめました。

 

気候変動リスクについて当行グループに重要な影響を与える投融資先セクターを特定するにあたっては、前述のリスクヒートマップのとおり、セクターごとにリスク評価を実施し、当行グループの投融資先ポートフォリオの構成から、重要度の検討を行っています。物理的リスクの高いセクターは「不動産(含む個人向け)」、移行リスクの高いセクターは、「電力ユーティリティ」「海運」「⽯油・ガス」に着目しています。これらのセクターにつきそれぞれ物理的リスクの定量化、移行リスクの定量化の結果を開示していく方針です。
 

物理的リスクについては、これまで、国内不動産ノンリコースローン、住宅ローン、国内プロジェクトファイナンス、および新生フィナンシャルの個人向け無担保ローンについて定量化しました。物理的リスクの影響額を試算したところ、2050年にかけての与信関連費用は累積で55億円から90億円程度と予測しています。現時点で早急に対応策を打つ必要はないと思われる水準であるものの、継続してモニタリングし、定量化範囲の拡大を検討していきます。
 

移行リスクについては、電力ユーティリティ、⽯油・ガス、海運セクターの影響額を試算したところ、2050年にかけての与信関連費用は累積で85億円から320億円程度と予測しています。脱炭素社会への移行に向け、取引先とのエンゲージメント強化やリスク管理体制の強化につなげていきます。今後も定量化範囲の拡大を検討しつつ、脱炭素社会への移行に向けた課題の解決に資するプロジェクトや事業者への投融資に積極的に取り組んでいきます。

リスク管理

気候変動に関するリスクへの対応の強化に向けて、前述の物理リスクと移行リスクに対処することを意図し、「責任ある投融資に向けた取組方針」を制定するとともに、「赤道原則(Equator Principles)」「ポセイドン原則」「GXリーグ」といった国内外のイニシアティブに参画し、リスクと経済合理性とを適切に判断したうえで、ファイナンスに取り組んでいます。

責任ある投融資に向けた取組方針(2021年7月制定)

環境問題および社会課題に適切な配慮をしない企業と取引することを経営リスクととらえており、一部の特定事業に対する投融資については環境および社会に対する重大なリスクがあるという認識のもと、取引を禁止もしくは制限しています。
気候変動の観点では、予防的アプローチに基づき、新設の⽯炭火力発電の建設を使途とする新規の投融資をせず、⽯炭火力発電所向け投融資額の圧縮を進めています。

赤道原則(2020年4月採択)

大規模な開発を伴うプロジェクトへの融資に際しては赤道原則に基づき、プロジェクトの環境・社会への影響をレビューし総合的な意思決定をすることで、企業としての社会的責任を果たすとともに、環境・社会リスク管理の高度化を図っています。

 

> 赤道原則への取り組み

ポセイドン原則(2021年3月署名 アジア金融機関で4番目)

船舶ファイナンスに積極的に取り組む金融機関としてポセイドン原則に則り、お客さまおよび海運業界全体のトランジションを金融面から支援するとともに、事業に伴う気候変動リスクを管理していきます。

 

今後は新造/若齢船や二元燃料船といった最新技術を搭載した船舶に対するファイナンスを強化することで、融資ポートフォリオの継続的な入れ替えを図っていきます。

GXリーグ(2022年11月賛同表明、2023年4月参画)

当行グループは経産省主導で進められているGXリーグ基本構想に賛同、参画し、カーボンニュートラルへの取り組みを推進していきます。

指標と目標

指標と目標

当行グループは、サステナビリティ重点課題のひとつとして掲げる「気候変動などの環境課題への対応」として、以下の目標を掲げています。環境・社会の課題解決に取り組むお客さまに資金提供することが金融機関の重要な役割であるとの認識のうえ、積極的に取り組みを支援し、カーボンニュートラルへの取り組みを推進していきます。また、引き続きグループ一丸となって自社としての温室効果ガス排出量の削減に取り組みます。

脱炭素化社会への貢献目標

当行グループでは2022年度、日本橋と新川の拠点の電気を再生可能エネルギーに切り替えました。これにより、グループ全体の温室効果ガス排出量を削減できました。当行グループが掲げる「エネルギー使用に伴う温室効果ガス排出量を2030年度末までにネットゼロ」を確実にするべく、引き続きグループ一丸となって温室効果ガス排出量の削減に取り組みます。
 

  • SBI新生銀行グループのエネルギー使用に伴う温室効果ガス排出量を2030年度末までにネットゼロ
  • SBI新生銀行グループの投融資先ポートフォリオにおける温室効果ガス排出量を、2050年度末までにネットゼロ
  • 石炭火力発電向けプロジェクトファイナンス融資残高を2040年度末までにゼロ

 

温室効果ガス排出量実績は温室効果ガス排出量報告書をご覧ください。

投融資先ポートフォリオGHG(温室効果ガス)排出量

当行グループは、投融資先ポートフォリオからのGHG排出量を2050年度末までにネットゼロとすることを目標にしています。当該GHG排出量実績は、PCAFが公開する国際的な基準に準拠しております。今後も段階的な対象アセットの拡大および算定精度の向上に取り組む予定です。

(注)

1. 当該GHG排出量は、PCAFの公開する国際的な基準に準拠し算定しております。
2. データ質スコア:投融資先GHG排出量の計測・推定アプローチ別に計測・推定精度を5段階でスコア化しており、値が小さいほど精度が高いことを表します。
3. 当該GHG排出量は、各投融資先のGHG排出量のうち、当行グループの寄与分を算出しています。
4. PCAF基準における6アセットタイプのうち、事業法人は「上場株式および社債」ならびに「事業融資および非上場株式」、住宅ローンは「居住用不動産」、プロジェクトファイナンスは「プロジェクトファイナンス」、不動産ノンリコースローンは「商業用不動産」の算定方法に基づき、投融資先ポートフォリオGHG排出量を計測しました。