SBI新生銀行は、2020年4月に「赤道原則」(Equator Principles)を採択しました。赤道原則に基づき、開発を伴うプロジェクトに融資する際に、そのプロジェクトの環境・社会リスクの特定や影響評価を行っています。自然環境や地域社会に与える影響に配慮してプロジェクトが実施されるよう働きかけ、特定された環境・社会リスクを回避、あるいは緩和するための対策がとられているかを確認し、融資期間にわたり、環境・社会リスクが顕在化しないよう継続的にモニタリングを行うことにより、金融機関としての社会的責任を果たしていきます。

大規模なインフラ整備や開発を伴うプロジェクトは、自然環境や地域社会に負の影響を及ぼす可能性があります。金融機関も資金の貸し手としてこうした負の影響を回避または緩和するために、2003年に赤道原則が策定されました。 2024年4月現在、38カ国128の金融機関が赤道原則を採択しており、国内外のプロジェクトにおいて広く適用されています。また、赤道原則は継続的に改訂されており、2019年11月には人権の尊重や気候変動問題への配慮を一層強化した第四版が採択されました。
赤道原則は、プロジェクトの所在国や業種を問わず以下の要件を満たすプロジェクトファイナンス等を対象としており、融資の際には10の原則の遵守が求められます。赤道原則採択行は、遵守を確認するための内部体制を構築します。 具体的には、赤道原則を含む環境・社会配慮のための社内規程を制定し、融資プロセスに組み込むことが求められます。
赤道原則採択行は、赤道原則を遵守しないプロジェクトに対して融資を提供しません。
赤道原則の適用対象となる金融商品の種類と要件
金融商品の種類 |
要件 |
プロジェクトファイナンス |
プロジェクト総額10百万米ドル以上の全ての案件 |
プロジェクトファイナンス・アドバイザリー |
同上 |
プロジェクト紐付きコーポレートローン |
次の3つの条件を全て満たすコーポレートローン※
※バイヤーズクレジット型の輸出金融を含みますが、サプライヤーズクレジット型の輸出金融は含みません。また、一般運転資金、アセットファイナンス、ヘッジ取引、リース及び信用状取引(L/C)も適用対象外となります。 |
ブリッジローン |
貸出期間2年未満で、上記の要件を満たすプロジェクトファイナンスまたは PRCL によってリファイナンスされることを意図したもの |
プロジェクト紐付きリファイナンス プロジェクト紐付き買収ファイナンス |
次の3つの要件を全て満たす案件
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SBI新生銀行は、グループサステナビリティ経営ポリシーにおいて、事業を通じたお客さまのサステナビリティ課題の解決、ひいては持続可能な社会構造への変革を実現してこそ、当行グループの持続的な企業価値向上が可能であるという考えのもと、 気候や生態系などの環境への影響及び人権や労働安全衛生などの社会への影響に対して適切な対応を行わない事業への投融資や企業等と取引することを経営リスクと捉えています。
また、SBI新生銀行は経営上の重点課題(マテリアリティ)の一つとして、「社会・環境課題解決へ向けた金融機能提供」を掲げており、持続可能な社会資本への資金循環を促進する金融ソリューションの提供を推進しています。 具体的な取り組みの例としては、2012年以来、国内の再生可能エネルギーを中心に太陽光・風力・バイオマスなど再生可能エネルギー事業へのプロジェクトファイナンスの組成を積極的に推進し、再生可能エネルギーの普及拡大をサポートしてきました。
SBI新生銀行は、マテリアリティを通して社会的にポジティブなインパクトを創出していくためには、企業としての社会的責任と、資金の出し手として環境・社会配慮をお客さまに働きかけていく役割を強く認識し、融資するプロジェクトにおける環境・社会リスクの管理体制を強化することが不可欠と考え、赤道原則を採択しました。
SBI新生銀行は赤道原則の採択にあたり、社内規程「赤道原則に係る運用手続」を制定し、融資決定プロセスにこれを組み込んでいます。 サステナブルインパクト推進部サステナブルインパクト評価室は、当該手続に基づき、赤道原則遵守確認を含む環境・社会影響レビューを実施します。具体的な役割分担および業務フローは以下の通りです。

赤道原則の適用対象となる案件について、社内規程「赤道原則に係る運用手続」に基づき、赤道原則遵守の確認を含む環境・社会影響レビューを実施します。
大規模開発プロジェクトへの融資を担当するフロント部署は、環境・社会リスクの影響程度を把握するためのチェックリストである「スクリーニングフォーム」や関連情報をサステナブルインパクト評価室に提出します。 サステナブルインパクト評価室は、これに基づいて赤道原則の原則1(レビュー、およびカテゴリー付与)に従い、プロジェクトの人権、気候変動、生物多様性の観点も含めた潜在的な環境・社会に対するリスクと影響の大きさに応じたカテゴリーを付与します。 それぞれのカテゴリーの定義は以下の通りです。
カテゴリー |
定義 |
A |
環境・社会に対して重大な負の潜在的リスク、または、影響を及ぼす可能性があり、そのリスクと影響が多様、回復不能、または前例がないプロジェクト |
B |
環境・社会に対して限定的な潜在的リスク、または、影響を及ぼす可能性があり、そのリスクと影響の発生件数が少なく、概してその立地に限定され、多くの場合は回復可能であり、かつ、緩和策によって容易に対処可能なプロジェクト |
C |
環境・社会に対しての負のリスク、または、影響が最小限、または全くないプロジェクト |
サステナブルインパクト評価室は、「赤道原則適用チェックリスト」や業種別の「環境チェックリスト」等を基に、赤道原則遵守の確認を含む環境・社会影響レビューを行います。 赤道原則上の遵守事項およびそれらのレビューは、プロジェクトの性質、規模や段階、および付与されたカテゴリーの環境・社会リスクと影響の大きさに見合ったものとなります。 また、原則8(誓約条項(コベナンツ))に基づき、融資契約に赤道原則の遵守に関する内容を盛り込むことをお客さまと合意します。
赤道原則遵守状況を含む環境・社会影響レビューは、同室からフロント部署に通知されます。レビュー内容はリスク管理部署にも共有され、与信判断の一要素に組み込まれています。
例:カテゴリーAを付与したプロジェクトに求められる環境・社会配慮
原則 |
内容 |
原則2 |
環境・社会アセスメントの実施 |
原則3 |
適用される環境・社会基準の遵守 |
原則4 |
環境・社会マネジメントシステムの構築、赤道原則アクションプランの策定 |
原則5 |
ステークホルダー・エンゲージメントの実施 |
原則6 |
苦情処理メカニズムの構築 |
原則7 |
独立した環境・社会コンサルタントによるレビューの実施 |
原則8 |
誓約条項(コベナンツ)の設定 |
原則9 |
独立した環境・社会コンサルタントによるモニタリングと報告の検証 |
原則10 |
情報開示と透明性の確保 |
赤道原則では、「IFCパフォーマンススタンダード(IFC Performance Standards)」および「世界銀行グループ環境・衛生・安全(EHS)ガイドライン(The World Bank Group Environmental, Health and Safety (EHS) Guidelines)」を参照しています。 これらは、民間セクターにおける環境および社会的リスク管理のベンチマークとして世界的に広く採用されています。
<IFCパフォーマンススタンダード>
以下の8項目で構成された、環境および社会リスクに関する実施基準です。
PS1 環境・社会に対するリスクと影響の評価と管理
PS2 労働者と労働条件
PS3 資源効率と汚染防止
PS4 地域社会の衛生・安全・保安
PS5 土地取得と非自発的移転
PS6 生物多様性の保全および自然生物資源の持続的利用の管理
PS7 先住民族
PS8 文化遺産
<世界銀行グループ環境・衛生・安全(EHS)ガイドライン>
環境(Environment)、衛生(Health)、安全(Safety)における、国際的な業界グッド・プラクティスを含んだ技術的参照文書です。 全ての産業セクターに適用できる「一般EHSガイドライン」と、個別産業特有の影響や評価指標を含む「産業セクター別ガイドライン」で構成されています。
SBI新生銀行は、融資期間にわたって、お客さまから提出される定期報告書等により、適用対象となる案件が赤道原則に関する誓約事項を遵守しているかを定期的に確認します。
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2023年(2023年4月1日~2023年12月31日) (348KB)
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2022年度(2022年4月1日~2023年3月31日) (344KB)
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2021年度(2021年4月1日~2022年3月31日) (330KB)
2020年4月の赤道原則の採択に際し、フロント部署および審査セクション担当者を対象にオンライン研修を実施しました。 そこでは、プロジェクトが環境・社会に及しうる影響やそのリスクについて事例を通して説明し、環境社会配慮の重要性に対する認識を深めたうえで、赤道原則の概要および環境・社会影響レビューの実施フローの説明をしました。 採択以降も、主にプロジェクトファイナンス関連業務のフロント部署及び審査部署の新人・新任担当者を主な対象とした研修を年次で実施しており、その動画はアーカイブ保存し随時視聴・復習ができるようにしています。
このように、SBI新生銀行では今後も定期的な社内研修の実施等を通じて、環境・社会配慮に対する社内意識の醸成に努めていきます。