2025年度は、各国の関税政策や貿易を巡る不確実性、地政学リスク、為替・資源価格の変動などを背景に、先行きを見通すことが困難な事業環境が続きました。そのような不確実性が高まる中でも、日本経済は、物価上昇や人手不足の影響を受けながらも企業収益・設備投資・賃上げの動き等に支えられ、緩やかな回復基調にあると認識しております。また、長く続いた超低金利を脱し「金利のある世界」が到来し、銀行本来の社会的役割や期待を発揮するべき時機にあります。
同時に、金利上昇局面は、預金基盤の安定性・保有資産のリスク管理・調達コスト・市場リスクへの対応など、金融機関としての総合的な経営管理能力が問われる環境でもあります。また、生成AIの急速な進展による事業ひいては社会構造そのものの変革に柔軟に対応し、高まる一方のサイバーセキュリティ脅威への備えを万全に期すことが極めて重要と認識したうえで、こうした環境変化をむしろ成長機会としてとらえ、一層の収益力の向上と経営基盤の強化に取り組んでまいりました。
中期経営計画の1年目となる2025年度は、当行グループにとって収益力と資本効率の向上が具体的な成果として表れた一年となりました。業績面では、業務粗利益、税引前純利益、親会社株主に帰属する純利益のいずれも過去最高を更新し、ROEは前年度の8.8%から10.4%へと大きく上昇しました。
この業績は、外部環境の変化によるものだけではなく、当行グループの財務基盤の拡大と収益構造の改善が着実に進んできた結果であると考えています。預金量・営業性資産は中期経営計画の目標に向けて順調に拡大し、貸出金と預金の金利差も改善しました。加えて、非資金利益の伸長、経費率の改善など、当行グループの収益力と資本効率は一段と向上しました。
SBIグループとのシナジーも、この成果に大きく寄与しています。リテール領域では、SBI証券との連携を通じて預金と投資をシームレスにつなぐ「SBIハイパー預金」をローンチし、当行グループの顧客基盤と安定的な調達基盤の拡大を支える取り組みとして順調に立ち上げました。また、法人向けのビジネスにおいても、第4のメガバンク構想を推進し地域金融機関との協働を通じた案件組成・ディストリビューションを年間5,000億円規模まで拡大させ、SBIグループ各社と連携し信託型ステーブルコインの発行を進めるなど2026年6月発行済)次世代金融の実現に向けた取り組みを一層拡げています。
これらは、当行グループが次の成長ステージに進むための礎です。2026年度は、この基盤をさらに強化しながら、税引前純利益など中期経営計画で掲げる財務目標について1年前倒しで達成する計画です。
2021年12月にSBIグループ入りしてから4年余り、当行グループはSBIグループの中核銀行としての役割を明確にしながら、事業基盤の強化を進めてまいりました。SBIグループは、世界でも類例の少ない極めてユニークな企業生態系であり、証券、銀行、保険、デジタルアセット、ベンチャー投資など、幅広い機能と、2026年3月末時点で8,256万の国内外の顧客基盤を持っています。当行グループは、その中で銀行機能を担う中核として、グループ各社の機能・サービスを徹底的に活用し、お客さまにとって真に価値のある商品・サービスを提供していくことを使命としています。メガバンクとは異なる特性を十分に発揮しながら、お客さまのニーズをきめ細かくとらえ、当行グループのみならずSBIグループ各社の機能を有機的に結びつけ、さまざまなサービスを迅速かつ柔軟に提供してまいります。
2025年9月に提供を開始したSBIハイパー預金は、SBI証券と当行との口座間の資金移動を自動化することで、預金と投資をシームレスにつなぎ、お客さまの資金をより便利に、より有効に活用いただける仕組みを提供しています。SBIグループは、事業構築の基本観の第一に「顧客中心主義」を掲げておりますが、このSBIハイパー預金は、「お客さまの金利を1日たりとも1円たりとも無駄にしない」という顧客中心主義の考え方を実践する最たるものです。お客さまの強いご支持のおかげをもちまして、SBIハイパー預金は提供開始後、順調に利用が拡大し、2026年3月末時点で残高1兆3,000億円にまで拡大しています。
また、このSBIハイパー預金は、お客さまにとっては利便性の高いサービスであると同時に、当行にとっては低コストで安定性の高い資金調達基盤を拡大するための戦略インフラとなるサービスです。預金、証券、住宅ローン、資産運用、決済、次世代金融をつなぐ起点として、グループ全体の顧客基盤拡大と収益基盤の拡充につながるものと考えています。
「第4のメガバンク構想」は、SBIグループが顧客中心主義とともに事業構築の基本観に掲げる「公益は私益に繋がる」という考え方のもと、地域金融機関との連携を通じて、地域経済を支え、地方創生に貢献していく取り組みです。地方創生は、当行のサステナビリティ経営においても優先事項のひとつに掲げており、地域社会への貢献と当行グループの企業価値向上を両立する、当行グループならではの取り組みです。
日本の地域社会では、人口減少や地域産業の担い手不足などの構造的な課題を抱えています。地域社会を支える重要な役割を果たしている地域金融機関自身もシステム投資、サイバーセキュリティ、人材育成、リスク管理の高度化といった複数の大きな課題に直面しています。各行の経営環境や対応力はそれぞれ異なりますが、こうした課題の中には、各地域の地域金融機関単独では十分な対応が難しいものも増えつつあると考えております。
当行グループは、幅広い金融機能を備えた銀行グループとして培ってきた専門性に加え、SBIグループ各社が有する多様なソリューションを地域金融機関に橋渡しする役割を担っています。地域金融機関の顧客基盤や地域情報と、当行グループおよびSBIグループの機能を結びつけることで、地域金融機関の事業機会の拡大や経営基盤の強化を後押しし、地域金融全体の発展に貢献してまいります。
同時に、この構想は、当行グループの収益力と企業価値の向上にもつながるものです。地域金融機関との連携を通じて、商品やサービスの供給、案件組成、ディストリビューション、地域プロジェクトへの参画などを拡大することで、資金利益・非資金利益の双方で収益機会を広げることができます。とりわけ、当行グループの資本やバランスシートを効率的に活用するうえでも重要な取り組みであり、「量の拡大」と「質の向上」を両立させる成長基盤となると考えています。
SBIグループでは、創業30周年(2029年3月期)を見据え断行するべき三大戦略目標を策定し、そのひとつとして、「オンチェーン化に向けた組織変革を断行し、世界に先駆けて次世代の金融サービスを提供」を掲げています。当行グループはこの目標において重要な役割を担っており、AIやブロックチェーンなどの先進的な技術を活用し、従来の銀行機能を高度化するだけでなく、伝統的な金融とデジタルアセット領域をつなぐ新たな金融サービスの実装を進めていきます。
SBIホールディングスとStartale Groupが共同開発し、SBI新生信託銀行が発行および資産管理を担う日本円ステーブルコイン「JPYSC」が、日本初の「信託型(3号電子決済手段)」として2026年6月に先行提供を開始しました。JPYSCは将来的に、資産のトークン化に伴う決済や国内外の送金・決済など、さまざまな金融取引の高度化につながる可能性を有しています。
また、トークン化預金やブロックチェーン基盤を活用した国際送金、AIによる与信審査業務の高度化など、次世代金融に関する取り組みは着実に広がっています。
SBIグループは創業以来、「革新的技術に対する徹底的な信奉」を基本観のひとつとして大事にしています。私たちが目指しているのは、テクノロジーを活用することで、お客さまにとってより便利・安全で、付加価値の高い金融サービスを提供することです。銀行預金、証券取引、決済などをつなぎ、金融機能をよりシームレスに結びつけていくことで「次世代の金融」を提供してまいります。
金融機関の競争力の源泉は人材です。どれだけ優れた戦略やシステムがあっても、それを実行する人材がいなければ、持続的な成長は実現できません。特に、多様な機能を有する当行グループにおいては、各領域の専門性を有する人材が互いに連携し知見を組織全体で活かしていくことが不可欠です。また、人材の力を最大限に引き出すために、経営の考え方が組織の隅々にまで浸透し共有しております。
生成AIをはじめとするテクノロジーの進展により、従来型の定型的な銀行業務は大きく変わっていきます。しかし、その中で人が生み出す価値の重要性はむしろ高まっています。お客さまの声を起点に、SBIグループ各社や地域金融機関などと連携し、新たな案件を構想し実行する。これらは、単なるシステムでは代替できない、人材価値そのものです。
SBIグループには、未来に継承すべき企業文化のDNAがあり、その第一に「起業家精神を持ち続けること(Entrepreneurship)」を据えています。当行グループにおいても、「前年と同じことを繰り返す」という発想から脱却し、環境変化を先取りして自ら変化を起こしていくことが求められます。若い世代や現場の社員が率直に声を上げ、その声が新たな挑戦や変革につながっていく組織風土こそが、当行グループの成長を支える原動力になると考えています。人材を経営資本としてとらえ、その能力を最大化させることで、当行グループの持続的な企業価値向上につなげてまいります。
当行グループは、公的資金によって長年支えられてまいりました。公的資金は国民の皆さまのご負担によるものであり、その意義を私たちは決して忘れてはなりません。公的資金を完済したからこそ、その歴史や経験を過去のものとするのではなく、これからの経営に活かしていくことが重要であると考えています。
私たちにできる最大の恩返しは、他の銀行にはない特色ある商品・サービスを提供し、お客さま、地域社会、株主の皆さまをはじめとするステークホルダーに価値を提供し続けることです。SBIグループの中核銀行として、顧客中心主義を徹底し、第4のメガバンク構想を通じて地域金融の発展に貢献し、次世代金融を通じて新たな価値を創出していくこと。それが、これからのSBI新生銀行グループの進むべき方向と考えています。
公的資金完済と再上場は、当行グループにとって大きな節目でした。そして私たちはその先の成長に向けて歩みを進めています。SBI新生銀行グループは、SBIグループの中核銀行として次世代の金融を提供し、お客さま、地域社会、株主の皆さまとともに、新たな未来を切り拓いてまいります。上場会社としての規律を持ち、資本市場との対話を重ねながら、持続的な企業価値向上に取り組んでまいります。今後の当行グループに、ぜひご期待ください。
2026年7月
代表取締役社長
川島 克哉