SBIグループの中核銀行として、さらなる成長ステージへ

SBIグループとしての一体化

皆さまには、日頃よりご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。
 SBI新生銀行グループがSBIグループ入りして、2年余りが経過いたしました。この1年は、引き続き「顧客中心主義」を徹底し、顧客基盤・収益基盤の拡大に努めたことに加え、商号を「SBI新生銀行」とし、SBIグループとしての一体化も大きく進展いたしました。個人のお客さまにSBIグループの先駆的で多様な商品・サービスを提供する共同店舗「SBI新生ウェルスマネジメント」の出店を進めており、2024年度末までに全22支店を共同店舗化(併設)することはその一例です。法人ビジネスや証券投資の領域なども含め、2023年度のSBIグループとのシナジー効果は135億円と、前年度の50億円を大きく上回り、SBIグループ入りの成果が着実に表れてきています。
 またSBIグループとのさらなる一体化、より中長期的な経営戦略の構築・遂行のため、2023年9月には株式の非公開化を行いました。改めて、これまで株主として支えていただいた皆さまに御礼申し上げます。その後、株式の併合を経て、2024年2月には預金保険機構が保有する端株を買い取る形で、18年ぶりに公的資金の一部(約193億円)を返済しました。現在、当行、SBIホールディングス、預金保険機構、および整理回収機構の4者での契約に基づき、公的資金の返済スキームについて検討を進めており、遅くとも2025年6月までには合意する予定です。

2023年度業績および中期経営計画2年間の振り返り

中期経営計画「SBI新生銀行グループの中期ビジョン」の2年目において、当行はSBIグループの中核銀行として一体化を推進し、大きな成果を上げることができました。業務粗利益・実質業務純益は、ともに2011年度以降で最高となる水準に達し、当期純利益は前期比36%増の579億円となりました。また営業性資産残高は前期末比1.1兆円増の11.4兆円、預金残高は同1.6兆円増の11.5兆円となるなど、顧客基盤や基礎的収益力が大幅に拡大しました。こうした成果は、SBIグループが掲げる「顧客中心主義」の徹底や、SBIグループ各社とのシナジーの追求が大きく貢献しています。

 個人ビジネスにおいては、「貯蓄から投資へ」と 2500いう社会的な潮流が本格化する中で、商品・サービスのフルラインナップ化に注力し、SBI証券およびSBIマネープラザとの連携を中心に成果を上げてきました。2022年8月にスタートしたSBIマネープラザとの共同店舗は8店舗(2024年3月末時点)に拡大し、2024年度末までには全22支店を共同店舗化(併設)する方針です。また2024年6月に共同店舗の名称を「SBI新生ウェルスマネジメント」と改め、個人のお客さまの資産運用と資産管理において質の高いコンサルティングサービスを提供する体制を整えていきます。SBIグループの先駆的で多様な商品・サービスを取り揃えた共同店舗の預り資産は、開業後1年7か月となる2024年3月末に2,000億円を超え、多くのお客さまにご評価いただいています。またお客さまとの取引の基盤となる預金や住宅ローンでは、「顧客中心主義」を徹底し、マイナス金利解除後も競争力のある金利を提供しています。

 こうした取り組みの結果、SBIグループ入り前に約300万口座であったリテール口座数は、2年間で大幅な伸びに転じ、353万口座(2024年3月末時点)にまで拡大しました。

 法人ビジネスにおいては、当行の強みのひとつであるストラクチャードファイナンスや法人営業を中心に顧客開拓や取引深耕に注力したことにより、営業性資産が大幅に拡大し収益力が着実に向上しました。SBIグループとの連携では、当行とSBIインベストメント、SBI証券がワンストップで投資から融資までを提供する体制を構築し、融資先の紹介のほか、SBIインベストメント投資先へのベンチャーデット提供や、SBI証券が主幹事を務めるSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)案件に対するノンリコースローンの実行等、投融資・証券化案件など累計で128件/5,587億円(2024年3月末時点)の連携を実現しました。
 またSBIグループ・当行グループ・地域金融機関が三位一体となって地方創生を推進する「トライアングル戦略」を通じて、地域金融機関との連携が着実に進展しました。具体的には、当行が組成する融資案件の地域金融機関への紹介や、地元企業に対する地域金融機関との協調融資等に加えて、近年社会的にも需要が高まっているサステナブルファイナンスの組成・提供や、アプラス、新生フィナンシャル、昭和リースなどグループ会社を通じた取引など、幅広い分野において地域金融機関との関係性が強化され、地域金融機関のプラットフォーマーとして全国の地方銀行との取引は93行にまで広がっています。

海外事業は、ニュージーランド最大のノンバンクであるUDCファイナンスの業績が堅調に推移したほか、各地域の各々の事業や会社を採算性・成長性の観点で総合的に見直し、事業のリストラクチャリングを行いました。
 また証券投資は中期的な収益力強化を視野に入れ、これまでの国債を中心とした運用から、投資信託やクレジットに関連した証券化商品などに投資対象を広げることで投資の高度化に取り組み、運用規模の拡大と商品の多様化を進めました。
 昨年度に引き続きSBIグループ全体を見渡した組織再編にも取り組み、新生企業投資が営むプライベートエクイティ事業のグループ内統合や、新生証券の実質的なSBI証券への編入などを行った結果、2024年度以降、年間15億円程度のコスト削減が実現する見込みです。また2024年1月には、個人・法人向けに投資用不動産ファイナンス事業を営むダイヤモンドアセットファイナンスをM&Aにより新たに子会社化するなど、インオーガニックな成長にも取り組んでいます。

事業を通じたサステナビリティへの貢献

当行グループは、サステナビリティ経営として「事業を通じた環境・社会・お客さまへの長期的な貢献」と「SBI新生銀行グループの持続的な成長」との好循環を目指しています。SBIグループの機能を存分に活用し、お客さまの課題解決に取り組むことで、お客さまの事業とそれを取り巻く環境・社会がより良いものとなり、そのことが当行グループの企業価値向上へとつながるものと考えています。
 法人ビジネスにおける「サステナブルファイナンス」は、事業を通じたサステナビリティへの貢献として、特徴のある取り組みのひとつです。2020年2月に「サステナブルインパクト評価室」を新設し、サステナブルファイナンスの評価を内製化したことで、お客さまの深い理解に基づく評価と高い経済性を実現しています。サステナビリティ目標の一つとして、サステナブルファイナンスを2030年度末までに累計5兆円組成することを掲げており、グリーンローン、ソーシャルローンなどのファイナンスを提供するほか、金融機関の立場から企業の脱炭素化を支援するものとして、お客さまとの対話を通じたトランジション・ファイナンスなどにも取り組んでいます。サステナブルファイナンスは地域金融機関の関心も高く、個別案件での協調のほか、人材交流や研修実施等を通じて地域におけるサステナビリティの推進も支援しています。昭和リースでの環境配慮型住宅(ZEH等)向けのファンドの組成や、個人ビジネスにおける「サステナビリティ預金」の取り扱いなど、さまざまな環境・社会課題の解決に向け、事業を通じたサステナビリティへの貢献に取り組んでいます。

人材価値向上に向けた取り組み

金融機関にとって、人材は最も重要な資本であると考えています。当行グループでは、従業員一人ひとりが最大限に能力を発揮するための学びの機会の提供や、キャリア形成に資する環境整備を進めています。またライフステージやライフイベントに応じて、柔軟な働き方を選択しながら業務に取り組み、その能力が十分に発揮できるよう、各種人事制度の導入や組織風土づくりに取り組んでいます。2023年9月には、女性活躍・ジェンダーの課題に限らず、多様な人材の活躍に資する取り組みを進めるため「グループダイバーシティ&インクルージョン委員会」を立ち上げました。さまざまな個性や能力を持った人材が集まり、有機的につながることで、既成概念にとらわれない新しい付加価値を生み出し、お客さまの多様な価値観・ニーズに応じた金融商品・サービスを提供することを実現してまいります。

金融を核に金融を超える

2024年度は中期経営計画の最終年度です。当初計画通り、2024年度の利益目標として連結純利益700億円を掲げており、その達成に向け全力で取り組んでまいります。さらに今後の成長に向けた準備も進めていきます。SBIグループは「金融を核に金融を超える」として、その企業生態系を日々進化・拡大させています。SBI証券の「ゼロ革命」のスタートや、SBIグループとして新たに検討している半導体事業への参入など、当行グループの顧客基盤や事業領域の拡大にも大きな影響をもたらします。こうした進化に、SBIグループの中核銀行として主体的に参画することで、企業生態系の拡大に貢献し、自らもさらなる成長を目指してまいります。
 「金利のある世界」が始まり、金融機関は歴史的な転換点を迎えました。外部環境が大きく変化する中では、自ら先駆的・先進的に変化していくことが必要です。SBI新生銀行はSBIグループの中核銀行として、今後もSBIグループが持つスピードや起業家精神のさらなる浸透を図り、「自己否定、自己変革、自己進化」のプロセスを繰り返すことで、SBIグループと一体となった成長を実現してまいります。

2024年7月

代表取締役社長

川島 克哉