新生事業承継では、後継者問題を抱える中堅・中小企業に対し、事業の継続と発展に向けたバイアウト支援を行っています。

その支援先の一つである、千葉県柏市に本社を置く武田産業株式会社は、自転車および自転車関連商品の卸売りを軸に、自社ブランド商品の企画・開発・物流・販売までを一貫して手掛けています。

今回は、武田産業が推進する防災・減災領域における自転車活用の取り組みについてご紹介します。

語る人:

武田産業株式会社 取締役社長  佐々木 俊之さん

新生事業承継株式会社 営業推進役 兼 武田産業 社外取締役  西田 智昭さん

※部署、役職はインタビュー当時

災害時に、自転車ができること

災害が起きたとき、地域ではさまざまな「移動」が必要となります。

避難所や防災拠点を行き来する。被害状況を確認する。必要な物資や情報を届ける。

しかし、被災地では道路の混雑や公共交通機関の停止、燃料供給の制約などにより、自動車がいつも通り使えるとは限りません。そうした場面において、燃料を必要とせず、小回りが利き、日常の延長線上で使うことのできる自転車に、近年、注目が集まっています。

武田産業ではこれまでも、エアレスタイヤ自転車「CHACLE」など、新素材や技術を活用した製品開発に取り組んできました。

そうした同社の知見を、社会課題の解決に活かすことはできないか。

武田産業の新たな挑戦はそんな問いから始まりました。

金沢市で導入された「MachiGuard」

2026年5月、金沢市役所において、災害対応型自転車「MachiGuard(マチガード)」の開発・導入に関する感謝状授与式が行われました。

参考:「まちのり」パワーアップ 災害対応に 4社開発 金沢市、職員用に6台導入:北陸中日新聞Web

 

本プロジェクトは、日本海コンサルタント株式会社、太陽誘電株式会社、株式会社ドコモ・バイクシェア、武田産業の4社が連携し、防災・減災を目的として進められたものです。

武田産業は、同社オリジナル商品である電動アシスト自転車「Rafoot」をベースに、災害時の実用性を高める仕様開発を担当しました。具体的には、空気入れが不要なエアレスタイヤ、一体成型構造のため破れにくいサドル、簡単に高さ調整ができるレバー式シートポスト、ヘルメットや救急用品を収納できる荷台などが採用されています。

また「MachiGuard」は、移動手段としてだけでなく、回生充電機能(上りで電力を消費し下りで充電する仕組み)も付帯しており、防災拠点における電力供給にも活用できる取り組みとされています。

金沢市でのMachiGuard贈呈感謝状授与式
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金沢市でのMachiGuard贈呈感謝状授与式

現場で使えるものにするために

MachiGuardには、災害時の現場で使いやすいものにするための、細やかな工夫が込められています。

誰でも扱いやすいこと。必要な時にきちんと使えること。普段から身近にあるものとして、無理なく備えられること。

武田産業が担当した仕様開発には、そうした現場目線が反映されています。

 

例えば、空気入れが不要なエアレスタイヤは、災害時に「いざ使おうとしたらタイヤの空気が抜けていた」という事態を避ける上で大きな意味を持ちます。また一体成型構造のため破れにくいサドルや、簡単に高さ調整ができるレバー式シートポストは、複数の人が共有する場面でも扱いやすい仕様となっています。ヘルメットや救急用品を収納できる荷台は、単なる移動だけでなく、必要な備品を運ぶという防災用途にもつながります。

武田産業が長年培ってきた自転車への知見、商品企画力、そしてユーザー目線でモノづくりを考える姿勢。

「MachiGuard」にはそうした武田産業らしさが随所に込められています。

電動アシスト自転車「Rafoot」の特長について説明する佐々木社長。手に持つバッテリーはスマートフォン等の充電にも利用できる。
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電動アシスト自転車「Rafoot」の特長について説明する佐々木社長。手に持つバッテリーはスマートフォン等の充電にも利用できる。

(佐々木社長)

「最も大切にしたのは、『災害時だからこそ、確実に使えること』です。自転車はもともと普段使いの乗り物ですが、それだけでなく社会課題の解決に役立つ乗り物にできないかという思いを以前から持っていました。エアレスタイヤ、破れにくいサドル、高さ調整が容易なシートポスト、できる限り積載量を増やした荷台などの現場で役立つ仕様を、試作を繰り返し一つひとつ積み重ねています。4社の強みが一つになり、防災モビリティとして新しい価値を持つ製品に仕上がったと感じています」

一台の自転車から拡がる連携の可能性

一台の自転車に込められた工夫は、地域や企業のさまざまな備えへと拡がっていく可能性を持っています。

災害対応型自転車の活用場面は、自治体の防災施策だけに限られません。

企業のBCP対策、学校や病院、福祉施設、商業施設、工場、物流拠点など、災害時の移動や連絡手段を確保したい場面は数多くあります。

武田産業は、2026年6月に東京ビッグサイトで開催された「オフィス防災EXPO」にも出展するなどして、災害対応型自転車の導入意義について積極的に発信しています。

(佐々木社長)

「今後は自治体に加え、企業のBCP対策、学校や病院、介護施設、工場、物流拠点など、災害時の移動や備えが必要とされるさまざまな現場へ広げていきたいと考えています。道路事情や燃料供給が不安定な状況でも活躍できる自転車だからこそ、単なる普段使いの乗り物にとどまらない「防災」という新しい価値が提供できます。武田産業は、『地域を支えるモビリティメーカー』として、この新たな価値を全国に普及させていきたいと考えています。」

エアレスタイヤ(画像手前右側)と比較用の通常タイヤ(画像手前中央)を前にタイヤの特徴を説明する佐々木社長。
エアレスタイヤはチューブが存在しないため空気入れ不要で、ガラス片のような鋭利なものが刺さっても走り続けることができる。
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エアレスタイヤ(画像手前右側)と比較用の通常タイヤ(画像手前中央)を前にタイヤの特徴を説明する佐々木社長。
エアレスタイヤはチューブが存在しないため空気入れ不要で、ガラス片のような鋭利なものが刺さっても走り続けることができる。

一台の自転車が、地域の備えになり、企業のBCPを支え、災害時の移動や情報連携を助ける。

その可能性を拡げていくことは、武田産業にとっての新たな事業機会であると同時に、地域や企業の防災力を高める取り組みにもつながっていきます。

投資先の挑戦を、そばで支える

一台の自転車から生まれる可能性を、より多くの現場へ届けていく。

その過程を、新生事業承継もそばで支えています。

新生事業承継は、後継者問題を抱える中堅・中小企業に対し、事業の継続と発展を支援していますが、その支援は、株式の承継だけで終わるものではありません。経営基盤や管理体制の整備に加え、その会社が持つ強みを見つめ直し、新たな成長機会につなげていくことも投資後の重要なテーマとなります。

(西田さん)

「投資先支援というと、何か特別な施策をこちらから持ち込むように思われるかもしれませんが、投資先の皆様が既に持っている強みを一緒に見つめなおし、それをどこに繋げれば次の可能性が広がるのかを共に考えることが大切だと感じています。武田産業の場合は、自転車という身近な商品を、防災や地域レジリエンスの文脈で捉えなおすことで、新たな可能性が見えてきました。武田産業の災害対応用自転車は、自治体や企業のBCP、地域の防災拠点など、さまざまな場所で役立つ可能性があります。弊社としてもSBIグループのネットワークを最大限活かしながら、具体的な連携先との接点作りに取り組んでいるところです」

事業承継で受け継いだ価値を、次世代に向けて育む

佐々木社長(画像左)・西田営業推進役(画像右)
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佐々木社長(画像左)・西田営業推進役(画像右)

事業承継というと、会社を引継ぎ、雇用や取引関係を守ることを思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろんそれは大切な役割であるのですが、新生事業承継が目指している事業承継バイアウトはそこに留まるものではありません。

企業が長年培ってきた商品、技術、販売網、顧客や取引先との信頼関係、といった数字だけでは表しきれない価値も受け継ぎ、これからの社会や市場が必要とする形へと育んでいくことも、新生事業承継が大切にしている理念の一つです。

(西田さん)

「事業承継は、会社をそのまま残すためだけのものではないと考えています。その会社が長年培ってきた価値を、時代や社会のニーズに合わせて従業員の皆様と共に育てていく。そこに私たちが伴走する意味があると考えています。また武田産業の事例では、投資先企業の支援を通じて、私個人としても社会課題の解決に関わることができることに、とてもやりがいを感じています」

 

新生事業承継は、これからも投資先企業の現場に寄り添いながら、事業承継を持続可能な社会づくりにつなげる取り組みを続けていきます。