(第2部)社外との対話、そしてビジネス現場へ
 

第1部では、若手や女性の声を起点に、法人D&I部会が「働く人のエンゲージメント」というテーマとどう向き合ってきたのかをお伝えしました。
では、こうして集めた声や気づきは、その先でどのように活かされていくのでしょうか。
第2部では、視点を社外へと広げます。
他社・他行との情報交換を通じて見えてきたのは、私たちだけが悩んでいるわけではないという事実、そして、不安や課題を共有することが新たな学びや刺激を生むという実感でした。
後半では、そうした対話や学びを踏まえ、集めた声をどう形にし、どう運用し、いかにビジネス現場へと還元していくのかを考えます。

第2部語る人:

SBI新生銀行
ベンチャービジネス部 営業推進役  細田 哲也さん
執行役員キャッシュフローソリューション部長 山本 泰子(たいこ)さん

※部署、役職はインタビュー当時

Ⅲ. 働く人のエンゲージメントの向上③ 外部とのネットワーキング
―共感と刺激が行き交う、双方向の情報交換―

外部とのネットワーキング (担当:細田さん)
法人ビジネスならではの外部とのつながりを生かし、取引先、他行、グループ会社等との情報交換会の実施

━━ 外部との情報交換について伺います。法人D&I部会では、活動の初期段階から他行や他社との対話に取り組んできました。細田さん、なぜ「まず外を知ろう」と考えたのでしょうか。

 

細田さん
率直に言うと、自分たちの取り組みが進んでいるとは言えなかったからです。
たとえば、女性活躍についても、特に法人部門は他部門に比べるとそもそも女性の人数が多くありませんし、先進的な事例を持っているわけではない。だからこそ、内側だけで考えるのではなく、まずは外に出て、他社・他行がどう向き合っているのかを知ろうと考えました。

 

━━実際に話してみて、どんな反応がありましたか。
 
細田さん
印象的だったのは、こちらが悩みを話すと、相手からすぐに
「それ、よくわかります」
「うちもまったく同じです」
という言葉が返ってきたことです。
エンゲージメントの話をしても、特別な事例というより、共通の悩みとして受け止めてもらえた。その瞬間に、「自分たちだけではなかった」と感じました。

 

━━女性活躍推進のパートで出てきた「不安の共有」が、社外でも起きていたわけですね。

細田さん
本当にその通りです。
さきほど、不安を共有することで視野が広がるという話がありましたが、社外との対話でも同じことが起きていました。
悩みを言葉にすると、相手の工夫や考え方が返ってくる。共感と同時に、新しい視点をもらえる。そのやり取り自体が、とても学びになりました。


━━他行の取り組みで、特に印象に残った点はありますか。

 

細田さん
経営層がどれだけ本気でD&Iに向き合っているかが、社員から「見えている」ことの大切さです。
他行では、経営が自らの言葉でD&Iについて語り、現場との距離が近い形で関わっているケースが多くありました。そうした姿勢が社員にも伝わり、「これは一部の部署だけの取り組みではない」と理解されているのが印象的でした。

細田さん

━━一方で、当行の取り組みに対する反応もあったそうですね。

 

細田さん
はい。こちらが法人D&I部会の話をすると、
「現場の営業担当の方が、そこまでD&Iに関わっているんですか?」
と、驚かれることがありました。
D&Iは人事や広報などの専門部署が担うもの、という認識がまだ強い中で、営業である私たちが部会に参加し、議論し活動していること自体が先方の刺激になったようです。


━━他行からの学びをもらうだけではなく、同時に、当行の「現場が関わるD&I」という姿勢が、相手にとっての気づきにもなっていた。

 

細田さん
そう思います。
一方的に教わる関係ではなく、お互いに影響し合う、双方向の情報交換が生まれていたと感じています。


━━その中で、改めて感じたことはありますか。

 

細田さん
D&Iを、特定の専門部署だけに任せないことの大切さです。
営業担当を含め、現場の社員が自分の言葉でD&Iを語り、日々の仕事と結びつける。
その姿があるからこそ、取り組みが形骸化せず、組織に根づいていくのだと確信しています。


━━外での対話が、内側の意識も深めている。

 

細田さん
はい。外を知り、共感し合い、刺激を受け合う。その経験を社内に持ち帰り、現場の行動につなげていく。
D&Iは特別な活動ではなく、日々の仕事の延長線上にあるものだと、改めて感じています。

Ⅳ. まとめ ~ 働く人のエンゲージメント④ 声を、組織の力へ
―D&Iは「考え続ける基準」―

━━ここまで、若手の声、女性活躍、そして外部との情報交換についてお話を伺ってきました。最後に、これらの声をどう形にし、どう運用していくのか。山本さん、法人D&I部会全体を見て、どのように感じていますか。

 

山本さん
これまでの法人D&I部会の活動を通じて、さまざまな声を聴くことができたのは、本当に貴重な機会だったと感じています。一方で、率直に言えば、声を集めること以上に、それを「どう形にしていくか」が最も難しい部分だとも感じています。
現場から上がってくる声は本当に多様で、ときには相反するものもあります。それらを単に整理して終わらせるのではなく、「では、私たちはどう動くのか」「誰に、どのように働きかけていくのか」「それをどう運用していくのか」まで落とし込むことが、まさに知恵の絞りどころだと思っています。

 

━━まさに、部会としての腕の見せどころですね。

 

山本さん
はい。そして、その答えは一つではありません。
だからこそ、人事やD&Iをリードする部署だけで考えるのではなく、現場のメンバー自身が主体的に考えることが大切だと思っています。実際に働いているからこそ見える課題や、現実的な工夫があります。法人D&I部会の現場メンバー自らが企画し、若手の座談会の世代を広げていく、女性社員がつながり学び合うコミュニティを広げていく、外部の現場の方とのネットワーキングを広げていく━━。  そうした形で多くの方を巻き込みながら活動を進めていくこと。そして、さらに新たな声を聴きながら、企画をアップデートしていくことが重要だと考えています。最終的には、巻き込まれた皆さんが自発的に活動に参加し、次の人を巻き込んでいく。そんな好循環を生み出せたら理想ですね。

山本さん

━━働きやすさ、という言葉も、よく使われます。

 

山本さん
働きやすさは、単なる福利厚生や配慮の話ではなく、組織能力そのものだと思います。
多様な価値観や考え方が尊重され、活かされることで、組織は強くなっていく。その前提がなければ、持続的な成長は難しいのではないでしょうか。そして、その前提となるのが、お互いの多様な価値観や考え方に耳を傾けつつ、率直に意見を言い合えるコミュニケーションだと考えています。

 

━━いま、多様な価値観というお話がありましたが、日々の業務の中で多様な価値観を感じる場面はありますか。

 

山本さん
そうですね。たとえば、デジタル化やUIの進化をどう捉えるかという点でも、世代によって見方の違いを感じることがあります。
若手は「使いやすくなる」「直感的で便利になる」と前向きに捉えることが多い一方で、シニア層は「それは収益性にどうつながるのか」「安全性は担保されているのか」と、より慎重な視点で考える傾向があります。
どちらが正しい、という話ではありません。
むしろ、そうした捉え方の違いをお互いに理解し合うことで、「使いやすさ」と「収益性」をどう両立させるか、リスクをどうマネジメントするかといった、次の発想が生まれるのだと思います。
違いを否定するのではなく、組み合わせていくこと。その積み重ねが、新しい価値やビジネスにつながっていくのではないでしょうか。

 

━━考え続ける姿勢そのものが、大切だと。

 

山本さん
完璧な答えを一度で出すことはできません。
だからこそ、多様な声に耳を傾け、みんなで考え、試し、また考える。相互に理解し合い、意見を言い合いながら、より良い環境を作っていく。そのプロセス自体を当たり前のものとして大切にしていくことが、SBI新生銀行グループのD&Iの「基準」になっていくのだと思います。法人D&I部会を起点に、より幅広い年代、部門を超えた活動へと広げていくことで、壁のない組織をつくっていきたいと考えています。


< 後記 >
D&Iは特別な誰かのための取り組みではなく、私たち一人ひとりの日常の延長線上にあるものです。
若手の不安、女性活躍をめぐる迷い、外部との対話から得た気づき。そこに共通していたのは、「正解を知りたい」という思いよりも、「まずは声に出してみる」「相手の話を聞いてみる」という姿勢でした。

この取り組みが、社内にとどまらず、社外や社会へと広がり、やがてSBI新生銀行グループのビジネスや価値創造につながっていく。そのプロセスを、これからも多くの仲間とともに積み重ねていきたいと考えています。