SBI新生銀行グループは、多様性と包摂性を重視した職場づくりを目指し、グループD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)委員会を中心にさまざまな取り組みを進めています。

その一環として、リテール部門では「リテールD&I組織別部会(以下、リテールD&I部会)」が活動中です。2020年に始まった「リテール女性活躍推進プロジェクト」を前身とし、現場の声を丁寧に拾い上げながら、現場に寄り添った支援を具体化しています。

 

本記事は、「リテールD&I部会」(*)で取り組んでいる女性活躍推進について2部構成で紹介します。

第1部では、部会を牽引するエクゼクティブアドバイザー・小河原智子さんの想いと行動を軸に、現場発の変革がどのように組織の未来を切り拓いているのかをご紹介します。第2部は部会メンバー4名による座談会をお届けいたします。

(*)女性活躍推進以外にも、シニアの活躍などさまざまな取り組みが進行中です

語るひと:
SBI新生銀行 エグゼクティブアドバイザー  小河原 智子さん

※役職はインタビュー当時

§1  現場の声から始まる、制度を超えた挑戦

「育休から復帰した後、キャリアをどう描けばいいか」
「上司に相談したいけど、忙しそうで声をかけづらい」
「キャリアの見通しが持てない」
こうした声は、制度だけでは解決できない"こころの壁“を映し出しています。
 
リテール部門は女性従業員の比率が高く、日々の業務を支える重要な存在です。だからこそ、制度の整備に加え、彼女たちの“こころの壁”に応える、安心して働き続けられる環境づくりが求められました。
「誰かが動かなくては、多くの従業員が抱える不安は解消されない」
そう語る小河原さんは、これまで執行役員として、またリテール推進部長やリテール関西営業部長を歴任し、現場と経営の両面の視点を持っています。現在は、エクゼクティブアドバイザーとして、リテールD&I部会をリードするほか、グループD&I委員会に参画し、グループのD&I推進にも深く関わっています。

一見すると、順風満帆に見える小河原さんのキャリア。しかし、その道のりは決して一直線ではありませんでした。

新卒で証券会社に入社後、結婚を機に専業主婦に。「再び働くなら金融業界で」と決意し、銀行で再スタート。契約社員から社員へ。慣れない業務や新しい環境に戸惑いながらも模索を重ね、30代半ばでフィナンシャルセンター長に。責任の重さに直面し、時にはプレッシャーに押しつぶされそうになりながらも、「どうすれば前に進めるか」を考え抜き、顧客対応やチームマネジメントに全力を尽しました。また、多くの拠点を経験する中で、悩みながら働く女性の姿にも数多く触れてきました。自身も女性であることでの苦い想いを味わいました。

それでも、小河原さんは「これまでの様々な経験が、今の自分をつくっている」と振り返ります。
「私ができることをやってみよう」——そう決意した背景には、自身の経験から得た「誰かが動かなければ、現場の不安は解消されない」という想いがあります。その想いを原動力に、彼女は現場との対話を重視し、実効性のある取り組みを推進しています。

§2  声をカタチに —— 現場発・女性活躍推進の設計図

リテールD&I部会活動の設計は、現場の“生の声”に基づいています。
「現場の声を聞かなければ、何も始まらないです」——小河原さんは、まず全管理職との面談を開始し、すべての女性従業員の個別の状況を把握していきます。女性活躍推進というテーマにおいて、現場の実態を把握することが何よりも重要だと考えたからです。
 
冒頭でご紹介した「育休中の社員が復職に不安を感じていること」、「上司とのコミュニケーションが希薄になりがちなこと」、「キャリア形成に見通しが持てないこと」、-こうした声は、対面だからこそ聞けたものであり、現場のリアルを浮かび上がらせるものでした。
リテールD&I部会は、これらの声を具体的な施策に落とし込み、育休中の従業員に対する情報提供、復職後のキャリア支援、管理職向けの意識改革、「短期トレーニー制度」(**)のトライアルなど、実効性のある施策を次々と立ち上げています。
女性のキャリア構築支援勉強会の開催もその一例です。女性従業員が役員と直接交流できる場として設け、悩みや希望を率直に共有できる貴重な機会となっています。
 
こうした取り組みを通じて、部会は「人を支える場」へと進化しています。
「みんなで考えることが大事なんです」と小河原さんは語ります。
部会のメンバーは、リテール部門の各部店から構成されています。多様なバックグラウンドを持つ従業員が知恵を出し合って進めています。
 
(**) 社員が一定期間、異なる部署で業務を実践し、幅広い知識と経験を積むことで、組織全体の連携強化と人材育成を目指す制度。主体性を引き出すため、希望を重視したマッチング形式を採用。

§3  支える側も、支えられる側も —— 視点転換の経験

こうした活動を続ける中で、小河原さん自身も大きな転機がありました。今年、ご家族の急な手術・入院をきっかけに生活が一変したのです。
「夫の介護という現実に直面したのは人生で最も大きな出来事でした。入院とリハビリに寄り添いながら、仕事との“両立”の大変さを初めて“自分ごと”として痛感しました。体力のみならず、メンタル面の負担も大きく、日々の葛藤がどれほど大きいものか。頭では理解していたつもりでも、本当の意味では分かっていなかったのだと痛感しました。」
「これまで、女性活躍推進の施策を考えるとき、私は“制度”や“仕組み”といった枠組みに重きを置いてきました。現場の声を聞いてきたつもりでしたが、どこか“支える側のプラン”になっていた部分があったかもしれません」
 
また、これまでのキャリアの中で、節目ごとに導いてくれた上司、そして仲間や家族の存在が大きな支えになってきたことも強調します。
「これまでのキャリアは、与えられた役割に誠実に応え続ける日々でした。目の前の仕事に全力を尽くすことで信頼を得て、評価され、次のステップへ進む——その積み重ねが私を導いてくれたのです。
でも、自分ひとりでここまで来たわけではないです。理解ある家族の支えもありましたし、職場での失敗や悩みも、周囲が寄り添ってくれたことで乗り越えることができました。
今回の経験は、“支える側”の視点だけでなく、“支えられる側”の視点を私に与えてくれました。」
 
人と人とのつながり、等身大の悩みや挑戦を分かち合うことは、組織全体のダイバーシティ推進の力になる — 小河原さんの経験は、そんな気づきが込められています。

§4  組織も自分も変わる——成長のストーリー

現在、リテールD&I部会で試験運用している『短期トレーニー制度』(** §2参照)は、“知らない世界を見に行く”という新しい挑戦を促しています。経験を土台に、視野を広げる一歩を踏み出す試みです。

「他部署に赴任して実際に業務に従事することで、これまでお互いに疑問を持っていた業務の流れについての理解が深まります。一般的な研修では得にくい“実感”や“共感”が生まれ、それが業務の背景への理解につながっていく。そうした積み重ねが、結果として業務改善から人的資本経営の実践に繋がるのではないかという期待もしています。」
 
普段は電話やチャットなどを通じて非対面でお客さまを対応しているメンバーが、店舗でお客さまに対面で接することで得られる気づきも大きいといいます。
 
「こういう機会は、個人のキャリアにもプラスになるだけではなく、現場で得た視点を組織に還元できると実感しています。グループ全体でこうした施策が展開されれば、現業務に戻っても視野を広げてネットワークを活かして仕事に取り組めるようになる。また、異動を伴わずに適性を見極める機会にもなります。リテール内での取り組みにとどまらず、グループに拡げていければと考えています。」
 
“人材の固定化”が進むと、キャリアの幅が限定的になることもあります。
「長期間同じような仕事をしていると気持ちが煮詰まってしまうことはあります。そんなとき、新たな業務に触れることで気持ちをポジティブに方向転換できる——そんな効果も期待しています。」
 
「育成というのは長期目線。毎年機会をつくり、人材育成のパイプラインをきちんと管理していく。PDCAを回しながら、組織的に行っていこうとしています。現場の管理職とのコミュニケーションも継続的に行い、女性従業員の育成やキャリア支援も長期的な視点で進めていきます。」


リテールD&I部会の現場の声を起点にした変革は、グループ全体の成長へとつながっています。
 第1部では、小河原さんの想いと行動を軸に、リテールD&I部会が目指す人的資本経営の実践と課題解決の取り組みを紹介しました。
続く第2部では、現場を体験した部会メンバーたちが語る“リアルな声”をお届けします。どんな気づきが生まれ、どんな変化が芽生えたのか——お楽しみに。