SBI新生銀行は、「顧客中心主義」を掲げるSBIグループの一員として、お客さま目線に立ったサービスの提供に努めています。不確実性の高い時代においては、お客さまのリアルな声に耳を傾け経営に活かすことは、多くのステークホルダーから信頼され続けるために欠かせない要素です。
今回ご紹介するVOC(お客さまの声:Voice of Customer)チームは、SBI新生銀行の文化が育ててきた、顧客とのインタラクティブな関係を大切にし、真に必要とされる金融機関のあり方を追求する取り組みを続けています。
VOCチームの日々の活動や経営にもたらす価値について、リテール業務支援部を束ねる金澤栄路さん、お客様サービス室長としてVOCと紛争苦情の両ラインを管轄する青柳峰湖さん、VOC担当として活動を牽引する小野宏紀さんと藤井なるみさんの4名にお話を聞きました。
語るひと:
金澤栄路
長年、リテールビジネスに従事し、各店舗の支店長を歴任。銀行の現場にお客さまの声を活かすことは不可欠、と話す。現在はリテール業務支援部長として、VOCを管轄するお客様サービス室をはじめとする業務支援の各ラインを統括している。
青柳峰湖
コンタクトセンターや各支店でお客さまと接した経験を持ち、現在はお客様サービス室長としてVOCチームのマネジメントのほか、苦情や紛争の解決に従事。直近は出向で外部から当行を見た経験を活かし、お客さまと同じ視点で当行を見るようにしている。
小野宏紀
2005年からコンタクトセンターでお客さま対応を経験後、スーパーバイザーとして多くのスタッフの育成に従事。調査業務によるお客さま対応を経て、2023年よりVOCチームに配属。毎日、各部署から集まるVOCの分類や分析、事実確認、対応の進捗確認を担当している。
藤井なるみ
長年、コンタクトセンターの品質管理に従事。9年前からVOCチームに配属となり、お客さまの声は課題解決の種になると実感。顧客満足につなげるために、ありのままの情報を上層部に伝えられるよう、お叱りの声もお褒めの言葉も大切に扱っている。
※部署・役職はインタビュー当時
――VOCは、お客さまから寄せられる声のこととお伺いしましたが、詳しく教えていただけますか?
青柳:ご要望やお叱りの声、お褒めの言葉、またプレスリリースに対する反応などお客さまから寄せられるさまざまな声(VOC)を、データとして集約し、役員をはじめ、従業員に周知し、改善を促すのが私たちの役割です。
苦情や紛争に関しては、私が管轄している別のチームで対応しますが、VOCについては、小野さんと藤井さんが事実確認から対応結果や再発防止策確認、集計、分類及び分析まで、一貫して担ってくれています。
お客さまからの声は、課題解決はもちろん、従業員にとってはモチベーションにもなると話す、お客様サービス室長・青柳さん
――VOCを収集・分析することには、どのような目的があるのでしょうか。
金澤:お客さまからの声を管轄するお客様サービス室は、リテール業務支援部の中でも最も現場に近いラインです。SBIグループが創業以来一貫して掲げる「顧客中心主義」の最前線です。
日々の業務を通じて接するお客さまの声には、サービスを改善し顧客満足度を向上させ、経営の持続性を高めるためのヒントがたくさん隠れているんですよ。
例えば、システムの不具合やレターの誤植などのご指摘をいただくと、大きな事故が起きる前に再発防止策を講じることができます。他行にあって当行にはないサービスについての問い合わせから、お客さまの隠れたニーズを知ることも少なくありません。自分たちでは気付かなかった潜在的な課題が可視化されることも多く、情報源として欠かせない貴重な顧客接点といえます。
お客さまの声は、経営改善に必ず役立つと話す金澤さん。支店長時代の経験が今に活かされているといいます
――VOCは、どのように収集・分析しているのですか。
小野:VOCは、社内共通のCRMシステムで管理しています。VOCを実際に入力するのは、コンタクトセンターやSFC(SBI新生フィナンシャルセンター:個人のお客さま向けの店舗)のスタッフ、住宅ローン部のセールスや、コンシューマーファンナンス部のカードローン販促など、個人のお客さまと接する機会がある従業員です。日々の業務を通じて知り得たVOCを入力していただき、集まった情報を私と藤井さんが分類し、社内の規程やマニュアルを見ながらコンタクトセンターの録音や現場へのヒアリングにて事実確認を行います。現場が入力してくれたVOCは1件も無駄にしません。
事実であることが確認できたら、対応が必要なVOCは各部署に対応を依頼し、改善が必要な案件や経営に影響がありそうなVOCはレポートにまとめて定期的に経営層へ提出するのが基本的な流れとなります。
小野さんは、毎日送られてくるVOCを出勤後すぐにチェック。即対応を心掛けている
藤井:重要なプレスリリースが配信された後には、VOCからお客さまが実際に感じられたお声を、経営陣にフィードバックすることもあります。
また、毎週月・火・金曜日に、VOCに基づいた業務改善活動のひとつとして、リテール業務の各関連部署のスタッフに向けてお客さまのお声をメール配信(Voice of Customer)しています。特に月曜日にはお客さまからいただいた「お褒めの言葉」を配信するようにしています。これは、実際にお客さまがWEB上に入力してくださったり、お手紙を送ってくださったり、あるいはコンタクトセンターへ感謝の言葉を伝えてくださったり、わざわざSFCに立ち寄って、担当者へのお礼の言葉を言づけてくださったりしたお褒めのエピソードをまとめたメールマガジンです。「私たちの仕事が、お客さまにご満足を与えている」と共有されることで、日々の業務についてこれまで以上にやりがいや喜びを感じてもらえると良いなと思っています。
週の始まりにお客さまからのお褒めの言葉を行内で共有し、モチベーションアップにつなげたいと話す藤井さん
――SBI新生銀行で働くみなさんのモチベーションアップにもVOCが活かされているのですね。
金澤:昨年からこの取り組みを進化させ、VOCを細分化してより多くの声を拾っていくようにしたんです。それによって、寄せられる数が多いVOCに傾きがちだった活動の比重が平均化され、少数でもリアルな声や、個別の従業員に対するお客さまの御礼の声をピックアップできるようになりました。お叱りの声も、お褒めの言葉も、よりリアルな声が現場に届いていると思います。
――SBI新生銀行のVOCの取り組みは、いつから始まったのですか。
金澤:われわれは2000年6月に「日本長期信用銀行」から「新生銀行」に商号を変更しましたが、その頃からお客さまの声にしっかり耳を傾けていこうという機運があり、VOCの共有がスタートしたと記憶しています。
当時、私はリテールの現場でマネジメントに携わっており、「お客さまの声は、どんなに些細なことでも取りこぼさず記録するように」と口を酸っぱくして伝えていました。毎朝、他店が公開しているVOCを確認し、失敗例は教訓として、お褒めの言葉はお手本として共有するのが日課でした。当時は各店舗で、それぞれが紙を使ってお客さまの声を共有していましたが、今はデータ化し、全社で共有できて対応もスピーディーです。
小野:今では、毎月2,500件前後にのぼるVOCが集まってきます。VOCの共有と確認は、もはや当行の文化でもあり、こうして継続して声を伝えていく事が大切だと実感しています。
私がコンタクトセンターに所属していた頃は、VOCに重要な示唆が含まれていることを何度も実感し、日々コツコツと入力していました。立場が変わった今も、現場でVOCを拾い上げてくださる方の思いがあってこその活動だと感じていますし、感謝しかありません。
このSBI新生銀行らしい文化がより深く根付いていくよう、従業員向けの研修をする際には、VOCを入力することがいかに重要かを丁寧に伝えるようにしています。
――実際に、VOCにもとづいて改善されたサービスの例があれば、ぜひ教えていただきたいです。
藤井:聴覚障がいがあるお客さまへの遠隔手話通訳サービス*、帳票の見やすさや記入欄の拡大などは、VOCを活かし、すぐに実行されました。各担当部署に改善対応を依頼してから実行までのスピードは総じて非常に速く、改善例は枚挙にいとまがありません。必要性が高いもの、実行のハードルが低いものにはすぐ取り組もう、という各部署の誠実さを感じます。
*手話通訳コールセンターのオペレーターがタブレット端末のテレビ電話機能を利用してお客さまとのコミュニケーションをスムーズにすすめます。
青柳:経営層もVOCを重視しているので、重要事項が経営方針に反映されるのも速いです。経営層向けに提出するVOCレポートには、特に注目してほしいVOCをトピックスとして載せていますが、迅速にジャッジして優先順位が高いものから改善計画に反映してくれています。経営層からは「コツコツとお客さまの要望を確実に満たしていくことでしか顧客満足度は向上しません」「優先順位をつけて一日でも早い改善を進めていこう」など、毎月コメントをいただき、組織全体がVOCに向き合っていると感じています。
金澤:実際、小野さんがスキャニングしたVOCは、業務開始時にチーム内で確認し、気づきを得ることも少なくありません。また、毎月関連部署とVOCに関して協議して作成したVOCレポートは経営層が注目することも多く、PDCAサイクルが適切に回っているとして、顧客の声(VOC)への取り組みは非常に高い信頼を得ています。
「顧客中心主義」のサービスについて話し合う4人の眼差しは、常にお客さまに向けられています
――VOCがさらに増えていくと、効率化も求められそうです。
青柳:最近では、業務の一部に生成AIを導入しました。エクスポートしたVOCの要約から大分類、中分類、小分類までを生成AIに任せており、分類の精度が上がってきています。これからも多くのお客さまの声にスピーディーに対応していきたいですし、生成AIを活用することで違った視点からの気づきがあるのではないかと思っています。
小野:お客さまが大切な時間を割いて伝えてくださっている声、またそれを対応した担当が責任をもって入力した内容ですから、しっかり確認し、効率化できるところはして、血の通った人間の目で見て考える時間も増やしていきたいです。
確実にお客さまと当行のためになる取り組みであるという自負を持って、一つひとつの「お客さまの声」に向き合っていきたいと思います。
藤井:そうですね。私は2016年からVOCに携わってきて、小さな声が積み重なることによってサービスが改善されたり、お客さまが当行のファンになってくださったりする様子を目の当たりにしてきました。これからも地道にVOCと向き合い、陰ながら事業を支えていきたいと思っています。
――ありがとうございました。最後に、VOCチームの展望をお聞かせください!
金澤:お客さまとの信頼関係の構築は、私たちの事業の持続可能性に直結する部分です。VOCチームは、まさにその重責を担う立場であり、当行の根幹を支えているといっても過言ではありません。VOCの重要性を経営が再認識した結果、今年の1月に「顧客体験(CX)」を軸に顧客向けサービスを開発するCX戦略部が設立され、VOCチームとの連携もスタートしました。
当行が顧客中心主義を掲げて事業を行う限り、VOCは当行の持続可能な未来をつくる重要なファクターであり続けるでしょう。派手さはなくても、経営を動かすチームとして、今後も活躍してくれることを期待しています。
【編集後記】
まさに「縁の下の力持ち」といった役割を果たす、VOCチームのみなさん。お客さまの小さな声も逃さず、「その月にすぐに活かされなくても、いずれ必ず経営に関わる声になる」という意識ですべてのVOCと向き合っているといいます。真摯にお客さまとの信頼関係の構築を担うみなさんの姿は、変革期にある金融サービス開拓の成功のカギとなると感じられました。
取材・文:藤巻史 撮影:橋本千尋